現在担当している業務は
BTCは国内最大の競走馬の育成調教施設であり、毎日600頭ほどの馬たちが来場しトレーニングをしています。私は調教場内の軽種馬診療所に所属し、BTC利用馬がケガや病気を発症した際に検査や治療をするといった診療業務が主な仕事です。診療のメインは1歳~2歳ですが、育成牧場に戻ってくる現役競走馬も扱っており、幅広く診療しています。また、診療を通して得られた臨床データを基にトレーニングに伴う疾病の発生状況など運動器に限らず様々な疾患に関する調査・研究も行っています。これらの研究成果については日々の診療・学会発表・BTCニュースなどを通じて馬を扱う皆様に啓蒙することにより疾患の早期発見・早期治療を目標としています。
公益財団法人 軽種馬育成調教センター(BTC)を就職先として選んだ理由は
私は中学生の時に乗馬を始めて以来馬に惹かれ、馬の獣医を目指すようになりました。日本における馬の多くは馬産地である北海道に集中しており、より多くの症例を診るためにも北海道で働きたいと思っていました。そのため就職活動では、北海道内で生産・育成を問わず研修にたくさん行き、BTCも研修先の一つでした。研修の際、診療所の雰囲気の良さに好印象を持ちました。また、BTCは年間約8000頭という圧倒的な診療頭数、研修制度が充実していることに特に魅力を感じ入職を決めました。
BTCの魅力は
1人の獣医として思うBTCの魅力はやはり集まってる症例の数の多さです。BTCを選んだ理由でもありますが年間8000頭とこれほどの頭数を診察してるところは多くありません。BTC近隣に育成牧場が集中しているため、往診のための移動時間がほとんどかからず、その分診療に時間をかけられるため必然的に診療できる頭数が増えます。これだけの頭数がいれば経験はもちろんたくさん積めますし、育成馬についても詳しくなれます。馬の獣医としてこれほど恵まれた環境はなかなか出会えません。 1人の職員として思うBTCの魅力は少人数のため、みな顔見知りで部署が違っても話しやすく、堅苦しさがないことです。普段仕事で関わることがなくても、お昼ご飯にみなさん食堂に集まり、雑談しているため、他の部署だからと壁に感じることはありません。何かあればお願いしやすいですし、意見も通りやすい職場だと思います。
これまでに印象深かったことは
印象に特に残っているのは、入職すぐに参加した新規採用獣医職員専門研修で見学させていただいた第89回日本ダービーです。私は乗馬をきっかけに馬の獣医を目指したため、競馬の知識はほぼなく実際に競馬を見に行ったこともありませんでした。そのため今回が初めて見る中央競馬かつGⅠレースでした。日本ダービー当日は出走馬と共に装鞍所から発走地点まで帯同させていただき、肌身で競馬場の緊張感とどれだけの人がかかわっているか知ることができました。発走地点のすぐ隣で日本ダービーを見させていただいたのは競馬ファンの歓声も相まって迫力がとてもすごく、圧巻でした。誰もが夢見るこのような舞台にBTC利用馬が出走できるよう、診療と調査・研究を通して貢献したいと思った瞬間でした。
仕事の面白さ、やりがい、大切にしていることは
診療の大半は1歳~2歳と若馬ばかりでやんちゃな馬や獣医に触られ慣れていない馬も多くいるため慎重に接することを大切にしています。特に夏に育成牧場に入厩してくる1歳馬は馴致も始まっていないと洗い場に入ることもままならず、傷を洗うことだけでも一苦労だったりします。そんな馬たちに対して声をかけ、安心させながら処置することを心掛けています。やんちゃな馬でも継続して処置していく中で、大人しく診療されるようになると馬自身の成長を感じられて面白さがあります。
今後の目標
まだ2年目で経験していないことも多くあるので、まずは経験値を上げ、診療所の先輩方に追いつけるようになりたいと思っています。初めて遭遇する症例もまだあり、自分の知識だけではどうにもならない時もあります。今は先輩方の全面的なサポートがありますが、一筋縄でいかないような難しい症例でも果敢に挑戦して、将来的には1人でもこなせるように知識と技術を身につけたいと思っています。得られた経験の中で自分の得意分野を見つけ、この疾患なら、この処置なら先生に頼みたいと牧場側から思ってもらえるような獣医になりたいです。
就職活動中の皆さんへのメッセージ
大学時代は馬のことを習う機会があまりなく、馬の獣医師になろうと全く考えず就職していく人も多いと思います。もし、少しでも興味があれば馬の獣医も是非考えてみてほしいです。未知の世界で不安になる方もいますが、まずは実習に一度来てみてください。馬の獣医と一言にいっても育成馬、競走馬、繁殖馬など見る馬の種類は様々です。思わぬところで魅力を感じることがあるかもしれません。 BTCは研修制度も充実しているので馬に触ったことがなくても大丈夫ですし、競馬が分からなくても大丈夫です。私自身、乗馬を始めてから馬に興味を持ったので、就職したときには競馬の知識はほとんどありませんでした。BTCは毎年獣医師の採用をしているわけではありませんが、馬獣医の需要が多いのが実情だと思います。