競走能力の調査研究


軽種馬の競走能力の向上等に関する調査研究

当センターでは「強い馬づくり」の一環として、「育成期のトレーニング障害に関する調査」等の調査研究をすすめています。

育成期のトレーニング障害に関する調査研究

軽種馬育成調教場利用馬の診療及び各獣医学的臨床検査から、トレーニングに伴う疾病の発生状況やこれらの異常所見が将来のプア・パフォーマンスの原因になりうるかどうかについて調査、検討を行っています。  これまでに行われた調査研究の一部を以下に記します。

「育成期における中手近位掌側部の傷害」

 育成期では中手近位掌側部(いわゆる深管部)の傷害が問題となっています。これらの馬を精査した結果、繋靱帯の近位付着部炎あるいは第三中手骨近位掌側部の不完全骨折を発症していることが判りました。いずれの疾患においても適切なリハビリテーションを組むことで再発することなくデビューしており、良好な予後が示されました。

「育成馬の屈腱に関する調査」

今まで競走期の疾患と考えられていた屈腱炎が、育成期のトレーニングにおいても発症することがあり、その後の競走成績に悪影響を及ぼしていることが判りました。また、育成期において浅屈腱全域の肥大が生じることがあり、育成関係者の頭を悩ませてきました。これらの馬を調査した結果、この所見は必ずしも屈腱炎の前駆症状となっているわけではなく、その後の競走成績にも明らかな影響は認められませんでした。

「診断麻酔による育成馬の跛行診断」

診断麻酔は、跛行の原因特定のために用いられる手技の一つです。当センターでは触診等で跛行の原因がはっきりしない際に積極的に実施しています。前肢跛行を呈した2歳未出走馬の調査では、76%の馬で疼痛部位が明らかとなり、その主な原因が中手近位掌側部にあることが判明しました。これらの半数以上は、X線検査やエコー検査で明らかな異常はみられず、これらの画像診断で異常を伴わない傷害でも跛行を示すことが判りました。


 その他にも当センターでは、繋靱帯脚炎、大腿骨遠位内側顆の骨嚢胞、近位種子骨や脛骨の骨折など、育成期に生じる様々な運動器疾患の調査に積極的に取り組んでいます。  また、運動器疾患に限らず、日常診療で遭遇する食道閉塞(喉つまり)、眼疾患や消化器疾患に関する調査研究も行っています。

 これらの研究成果について、日々の診療・講習会・研修会・学術発表・BTCニュース等を通して調教責任者や馬取扱者に啓蒙することにより、疾患の早期発見、早期治療を行うことが可能となり、BTCでの調査研究の成果は育成期の管理を行う上での重要な指針となっています。